考え方・生き方

青空に飛ぶ|中学生の壮絶ないじめと神風特攻隊が交差する物語

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こんにちは、BabyJです😌。

しばらくご無沙汰をしてしまいました。

先日お伝えしたホームレスが販売する”The Big Issue”の中で紹介されていた『青空に飛ぶ』という本を読みました。

壮絶ないじめに苦しむ中学生と、それと交差する神風特攻隊員について書かれた小説です。

敵軍に機体ごと体当たりして爆死し、敵に攻撃を与える「特攻隊  *英語ではまさにsuicide mission」。その特攻隊員として9回飛び、9回生還した「佐々木友次」の実話が書かれています。

主人公は、アメリカで幼少期を送り、日本に戻った帰国子女の中学生男子。佐々木友次についての記述は、全て歴史的事実です。

この小説に、とても衝撃を受けたため、その内容をご紹介したいと思います。

青空に飛ぶ

日本のあり方に違和感を持つ主人公の中学生

主人公の萩原友人は、幼少期をアメリカで過ごした帰国子女。中1の2学期から日本の中学に転入します。

萩原友人は、両親に何度も釘を刺されます。

日本に行ったら、周りと同じにしなければいけない。目立ってはいけない。アメリカにいた時のように自己主張してはいけない。

転入した中学では、下校途中の買い食いが禁じられていました。真夏にどんなに喉が乾いていても飲み物を買うことも許されないのです (*それはうちの子供の中学もそうです)。

萩原友人は、疑問に思います。アメリカの中学で禁止されていたのは、裸で学校に行くことと、銃を持ち込むことなど、自分や周囲を危険に晒すことだけだったのです。

職員室に行って、喉が乾いても水も買えない校則に異議を唱え、納得のいく理由を求めました。けれども、教師は言ったのです。「校則だからだ。校則には従わなければいけない。」

納得のいく理由など得られませんでした。

そのように決まっているから従わなければならない。日本ではそうなのです。

毎日繰り返される壮絶ないじめ

転入した中学ではいじめが横行していました。

ある日、いじめられっこをかばったことをきっかけに (帰国子女だからではなく)、萩原友人はいじめの標的にされることになってしまったのです。

自分対クラス全員で壮絶ないじめが繰り返される毎日。

萩原友人は、コンパスの針を首に刺され、されるがまま命令に従います。糞尿や唾液のついたフライドポテトやゴキブリを食べ、クラス全員に、汚らしい、お前は人間以下だ、まだ生きているのか死ね、と言われ、LINEで全員から1日中罵られる日々です。

けれども、萩原友人は、そのような壮絶ないじめの対象になっていることを、親には決して言いません。心配をかけまいとする気持ちと、親に話すことは、いじめを激化させる結果しかもたらさないという諦めからでした。

壮絶ないじめは、読んでいてとても辛くなるほどです。

特攻隊員 佐々木友次のことを偶然知る

萩原友人は、壮絶ないじめから逃れるために、死を望むようになります。高いビルから、「青空に飛ぶ」計画を立てます。

けれども、その過程で、9回神風特攻隊として飛び、9回生還した隊員 佐々木友次のことを偶然知ることになります。そして、自分が死ぬ前に、彼のことを知りたいと強く望むようになります。

爆死することが任務であり運命であったところを、何故、9回も生きて帰ったのか、その理由を。

萩原友人は、佐々木友次について書かれた本を買い、飛ぶためのビルを探して彷徨いながら、取り出してはその本を読み漁りました。

そして、今は北海道の病院にいる佐々木友次本人に会いに行くのです。

友次が生き抜いた理由を見つけるために。

神風特攻隊の「死ぬために作られた機体」

本に書かれていました。

特攻隊のために用意された機体は、操縦者が「死ぬように」作られているのです。

大容量の爆弾が機内に備え付けてあり、外せないようになっているのです。機首から突き出た3メートルの「死のツノ」が、体当たりによって、敵軍の船体 (空母など)に接触すると、電流が走り、機内の爆弾が爆発するようになっているのです。

佐々木友次が所属する特攻隊「万朶隊 (ばんだたい)」は、第1回の特攻隊として、米軍艦隊に体当たりし、全員国のために死ぬことを命令されます。

それも、特攻実施の数日前に自分達のミッションを知らされたのです。

生きて戦うために機体を改造

けれども「万朶隊 」の隊長である「岩本隊長」には、米軍艦隊に対する体当たり攻撃は、自殺行為に値する効力がないことを見抜いていたのです。

「特攻隊」は、士気を高揚するために、軍が仕組んだ精神論に過ぎないことも。

岩本隊長は、整備班に依頼し、軍に無断で、「爆弾が落とせるように」機体を改造します。その行為は死刑に値する背信行為なのです。

そして、岩本隊長は佐々木友次等に言います。

「爆弾を艦隊に命中させて生きて戻って来い。」と。

死ねという命令に背き続ける特攻隊員

けれども、岩本隊長を始め、大多数が、戻ることを果たせず、米軍の攻撃を受け死んでしまいます。

佐々木友次は、小さい時から飛ぶことが大好きでした。その類い稀な操縦技術と、絶対に死なないという信念で、何度飛んでも生還し続けるのです。

特攻隊の殉死を大々的に公表し、賞賛し、士気高揚に利用する軍上層部にとっては、佐々木友次の生還はあってはならないことでした。天皇に殉死を報告し、勲章を与え、葬儀も出し、特攻隊員は全員死んだことになっているからです。

何度も生還する佐々木友次に、軍は命令し続けます。「今度こそ体当たりしろ。今度こそ死ね。」佐々木友次が病気になっても、高熱で苦しんでいても、回復を待たずに出陣を命令します。「今度こそ死ね。」と。

それでも佐々木友次は生還したのです。

それでも死なない佐々木友次に、軍は、射殺までも計画していたのだといいます。

何故、主人公は佐々木友次に惹かれたのか

萩原友人は、病院で、佐々木友次に尋ねます。何故、命令に背いたのか、何故死ななかったのか、と。

佐々木友次の答えは、簡単なものでした。

「寿命だ」と。「自分の寿命を自分で絶ってはいけない。」それだけでした。

けれども、萩原友人は自問します。

何故、自分はここまで佐々木友次に惹かれたのか。苦難に耐えて、打ち勝った人は他にもいる。それなのに、特別、佐々木友次に惹かれるのは何故か、と。

そして、萩原友人は答えを見つけます。

大変な状況の中で、強さを見せた人はたくさんいるだろう。でも、ぼくが友次さんに惹かれるのは、それだけじゃない。その時、答えがポンと浮かんで、思わず声が出た。

日本人らしくないからだ。

友次さんは、ぼくのイメージする日本人と違っていた。ぼくの知っている日本人は、大きな物に従って、じっと黙っている人達だ。独りでは絶対に多数とは戦わない。戦う時はいつも集団だ。空気を読んで、ムードに流されて、みんな周りの顔色をうかがう。

誰も独りでは反抗しない。誰も単独では抗議しない。誰もただ一人では文句を言わない。それが日本人だ。そして、ぼくも、そんな日本人そのものだ。

でも、友次さんは独りで反抗した。命令に背いた。国家に従わなかった。すごい。ただ、すごい。日本人でもこんな人がいるんだ。

自分で見つけた答えに、自分で驚いた。そして、納得した。ぼくが友次さんに強烈に惹かれる理由はこれだったんだ。

私はこの小説が伝えようとしたのは、個人主義 VS 集団主義/体制主義のように思いました。

主人公は帰国子女で、常にアメリカの個人主義と日本の集団/体制主義を比較しています。

それでも真髄は日本人で、日本的な生き方をしているのです。だから、日本人らしくない佐々木友次に惹かれたのでしょう。

前半にアメリカでのいじめのことも出てきます。アメリカでは、いじめられる人、いじめる人、介入しようとする人、傍観者といろいろな態度があります。いじめられっこをかばって戦う強い奴もいるのです。

でも、日本では1対クラス全員です。

結局、主人公 萩原友人は、「飛ばすに」遠い島の中学に転校することで小説は終わるのです。

間違ったものには反抗する勇気

特攻隊が終焉するまでに、何千人もの特攻隊員が殉死しました。「国のため」という名の元に死ねという命令に従ったのです。

けれども、佐々木友次は従いませんでした。

相手が国家だろうと権威だろうと、誤った命令に従う必要はないのです。自分の意志を貫き、どんな圧力にも屈せず、反抗し続けた佐々木友次は素晴らしいと思います。

そして、私も心からそういう生き方が正しいと思います。

ここが日本であっても。周りに合わせて黙っているのではなく、1人でも間違ったことには抗議し、戦うべきだと思うのです。

* アメリカ的が全て正しく、日本的は間違いという意味ではありません。

ではでは😌👍🏻。